『2分で読める事業承継コラム』 第①回 試練だらけの2022年、日本の中小企業が危機を迎えている

法政大学IM総研では、早くから事業承継について取組みを始め、玄場教授を中心に書籍やセミナーにより情報発信を行ってきました。

また、玄場研究室のHPではWeb連載として『イノベーション戦略と新規事業創出』という題名でイノベーション創出に関して14回の連載を掲載しています。

今回は、改めて事業承継とイノベーションとの関連性に注目し、事業承継することの重要性や効果的な進め方について、数回に渡ってコラムという形で連載したいと思います。

事業承継の問題は何年も前から取り上げられておりますが、今もなお継続した社会課題として大きな問題となっています。しかしながら、事業承継に早くから計画的に取り組むことによって単なる経営者の交代けでなく、企業を変革するためのイノベーション創出の機会でもあるのです。

まず第1回目のテーマは「2022年・中小企業の厳しい現実」について紹介します。

事業承継とイノベーションの関連性を考える前に、今現在の中小企業がおかれる厳しい状況を知っておく必要があります。そして苦しい状況だからこそイノベーションの必要性があるという状況を今一度確認したいと思います。

 

 

目次

第①回 試練だらけの2022年、日本の中小企業が死の危機を迎えている 
研究生:榎本典嗣

 

中小企業の景況感

2020年4月~6月期における中小企業の業況判断はリーマンマンショックをも下回る強烈な悪化を示しました。コロナウイルスの蔓延による緊急事態宣言からの外出制限があったことで、特に飲食、旅行、宿泊関連の企業は売上が0となる月も出てくる程、深刻な状況であったことは鮮明な記憶に残っています。

2022年に入りWithコロナもようやく浸透してきたことで各企業において回復の動きがみられるようになりました。しかしながら、全ての企業が回復したわけではなく、中小企業全体では依然として厳しい状況が続いています。

業況判断のDIの推移

    (出所)中小企業庁・中小企業基盤整備機構「中小企業景況調査」より筆者作成


中小企業の重要性

中小企業の業績が悪いことは日本経済にとって大きな問題を孕んでいます。

それは日本経済の大部分を支えているのは中小企業といっても過言ではないからです。このことは日本における企業数の割合を見れば一目瞭然です。少し古いデータとなりますが、2016年時点で約357万社ある日本企業のうち、実に99.7%を中小企業が占めています。

当然のことながら従業員数や付加価値額だけでなく、中小企業は日本のGDPにおいても大きな割合を占めているのです。

               (出所)中小企業白書2022より

そして、これから中小企業は苦しい展開を迎えます。

政府は支援策として給付金や無利子による積極的な融資を多く行ってきました。例えば、「持続化給付金」、「家賃支援給付金」、「事業復活支援金」、といった多くの給付金により倒産件数は大きく減りました。

しかしながら、上記のような支援によって倒産を免れることが出来た企業は、いよいよ給付金が無くなり借りていた融資の返済が始まります。未だ業績が思うように回復できていない企業がある中で、返済ができず倒産する企業が出てくることは避けられないといわれています。

加えて、中小企業を取り巻く環境は一段と厳しくなっています。

例えば人手不足の問題は依然として解消しておらず、特に飲食業や建設業を中心に不足感は年々増加している状況にあります。一方で賃金に関しては年々引き上げられており、労働者への賃金の支払い額は比例して大きくなっています。

更に、ここ最近は不安定な海外情勢によって仕入れ価格が上昇しています。原価の上昇をうまく価格転嫁できている企業は大企業ですら少なく、中小企業においては業績の悪化にもろに影響を与える状況となっています。

 

 

 

如何でしたでしょうか。
ここまでみてきた通り、中小企業を取り巻く環境は非常に厳しいものとなっています。以上の通り中小企業を取り巻く環境は非常に厳しいものとなっています

ただし、決して悲観することはありません。苦しい環境にあっても業績を伸ばしている企業は多くあるのです。これからの時代を生き抜くためには、既存の事業に胡坐をかくことなく如何にイノベーションを起こし続けるかが重要なキーワードになってきます。

 

第2回では、中小企業の事業承継の現状を確認します。

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