『2分で読める事業承継コラム』 第③回 実は分かっていない?そもそもイノベーションって何だろう?

本コラムでは事業承継とイノベーションとの関連性について注目し、早くから事業承継に取り組むことの重要性を説明しています。

第1回、第2回では事業承継を考えるにあたってのベースとなる中小企業と事業承継の現状を説明してきました。中小企業は苦しい状況にあり、事業承継はなかなか進んでいないという現状が確認出来ました。

引き続き第3回では「イノベーションとは何」というテーマを取り上げます。事業承継を実践することでイノベーションが起きるとしていますが、そもそも「イノベーション」という言葉の定義をしっかり捉えておくことが必要となります。

目次

第3回 実は分かっていない?そもそもイノベーションって何だろう? 
研究生:榎本典嗣

 

イノベーションの歴史

「イノベーション」、ここ最近はビジネスの世界においてこの言葉を聞かないことはありません。どの企業も既存の仕組みや製品ではこのまま生き残れないことを肌身で感じており、打開する手段として呪文のように「イノベーション」という言葉を多用している傾向があります。

しかし、本当の意味でイノベーションとは何かを捉え、使えているのか幾分か疑問が残ります。恐らくよく意味も分からないまま、「新しく何かを実行する」というニュアンスで使っている方が多いのではないでしょうか。

イノベーションの語源はラテン語の「innovare」で、innovareには「新たにする」「リニューアルする」などの意味を持っています。そして、イノベーションの概念を提唱したのはオーストリアの経済学者ヨーゼフ・シュンペーター(1883~1950)となります。1912年に発表した「経済発展の理論」でイノベーションを核にした経済理論を展開しました。

同書の中では「プロダクトイノベーション」「プロセスイノベーション」「マーケットイノベーション」「サプライチェーンイノベーション」「組織イノベーション」とイノベーションを5つに分類しましてます。

また、経済学者のピーター・ドラッカーが1985年の著書「イノベーションと起業家精神」において説いた「イノベーションに繋がる7つの機会」は今でも非常に有効なイノベーションの観点とされています。

 

イノベーションの定義

さて、次は視点を日本に向けてみたいと思います。かつて日本においては、「イノベーション」という言葉を「技術革新」と訳してきました。

実はこの「技術革新」という言葉はある意味日本で登場した造語になります。ただし、従来はイノベーションを「技術革新」であると考えても、その実態を表していたため問題はありませんでした。なぜならば、多くのイノベーションは高度な技術を開発して、新しい製品や製造プロセスを実現し世の中に革新をもたらす、正に「技術革新」がほとんどだったからです。(玄場2018)

新しい製品を作れば売れる。こういった高度成長経済時代においてはこの考え方で全く問題ありませんでした。「技術革新」こそが顧客に価値を与える「イノベーション」だったといえた時代だっと言えます。

そして現在はどうなっているのでしょうか。当然のことながら現在においては「技術革新」の意味から飛躍しイノベーションは様々な形で定義をされるようになっています。

ネットでも簡単に検索でき、様々な会社が様々な視点からイノベーションを定義付けています。

・物事の「新機軸」「新結合」「新しい切り口」「新しい活用法」を創造する行為(ウィキペディア)

・ビジネスに新しい価値を生み出す変革(ミイダスHP)

・これまでにない新しいサービスや製品などを生み出すこと(カオナビHP)

・顧客の課題解決のための新しい知識の利用(玄場2018)

 

ただし、どれにも共通することは「新しく生み出す」というワードです。ラテン語の「新たにする」という意味がベースにはなっており、ビジネス、価値、サービスといった言葉で装飾しています。

そこで私なりにイノベーションとは何かについて考えてみました。

色々な定義を見ているとイノベーションとは、
「新しい知識を利用することで顧客の課題解決を行い、社会的・経済的な価値を生み出すこと」
と定義できる気がします。

この定義ですが、よくよく見てみると大企業だけでなく、今となっては中小企業にも必要な内容となっています。むしろ多くの危機にさらされている中小企業こそが取組むべき命題ともいえるのではないでしょうか。

既存の商品やサービスでは未来永劫に渡ってお客様に価値を提供し続けることは出来ません。そして、この先も顧客の課題解決をするためには新しい商品やサービスを生み出すことは避けられません。

ただ単に目の前の顧客だけに注力するだけでなく、大きくは社会的にも価値を提供できるような考えを持たなければそもそも目の前の顧客にも価値提供が出来ない時代になっているのです。

時代に対応していくには古い考え方を切り替えていくことが要求されます。その為にはイノベーションの創出は事業を継続していく上で避けて通ることは出来ないのです。

そして、事業承継を行うことこそがイノベーションを生み出すチャンスとなり得ます。経営者が若返ることにより新しい何かが生まれることは間違いありません。それがイノベーションまで辿り着けるかは確約出来ませが。

第4回は実際に事業承継によって経営者が若返ることで、どのような効果が表れるのかを実数値を基に紹介していきたいと思います。

【参考文献】
玄場公規「イノベーション戦略入門」(アマゾンキンドル出版、2018年)

 

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