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連載 第1回 イノベーション戦略と新規事業創出

イノベーション戦略と新規事業創出

今週より玄場教授による『イノベーション戦略と新規事業創出』を連載いたします。今後は10週間に渡り毎週更新していく予定でおります。是非ともご覧いただけますようお願いいたします。

イノベーション戦略と新規事業創出(第1回) 玄場公規

日本企業にとって、イノベーションは重要である。この点、イノベーションとは、従来、「技術革新」と訳されてきた。しかし、その範囲は大きく広がっており、全ての日本企業、あるいは行政や大学・病院など非営利組織においても、イノベーションの創出が重要である。この連載では、拙著「イノベーション戦略入門」(アマゾンキンドル出版、2018)から抜粋して、イノベーション戦略の必要性と新規事業創出のための基本的知識について紹介しよう。

イノベーションが技術革新であれば、極端に言えば、イノベーション戦略は、技術開発を専門とする製造企業や情報通信企業のみの話であると言えた。しかしながら、近年、流通・小売・サービス企業などの非製造企業から、イノベーションが創出され、他の企業を圧倒する競争力を持ち、高い収益性を誇っている企業が登場している。これらの企業は非製造業であるが、明らかにイノベーションを創出しており、世界を席巻し、高い収益性を有していることに異論のある人はいないだろう。

イノベーションは、全ての企業にとって重要である。しかしながら、一方で、イノベーションを創出する過程には様々な不確実性があり、戦略的マネジメントが不可欠である。イノベーションは、素晴らしい技術があるからと言っても、決して自然発生的に創出されるものではなく、意図的に潜在需要を見出し、市場開拓を行い、収益を生み出すビジネスモデルを考えていかなければ、イノベーションを創出することは不可能である。

また、イノベーションを創出する人材(イノベーターと呼ばれる)は、技術開発に従事している人材のみではない。製造企業・非製造企業を問わず、商品企画、営業、購買など、イノベーション創出に直接的・間接的に貢献できる人材である。日本は「ものづくり」の国として、製造業の収益性は高かった。しかしながら、近年は、日本製造業でも業績は低迷している。その主たる原因は、金融危機を端緒とした世界規模の景気の低迷にあると言われているが、それだけが理由ではない。そもそも、日本製造企業はイノベーションを創出するための戦略的マネジメントが必要であり、それが無ければ容易に高い収益を上げるのが困難になってきている。日本企業が競争優位を確立するたには、他の企業では容易に開発できない製品や付加価値の高いサービスを提供していく必要があり、そのための戦略的マネジメントは必要不可欠である。

図は、日本の製造業と非製造業の営業利益率の推移を示した。1960年代及び1970年代前半の高度成長期には、日本の製造業は、高い収益性を有しており、また、それは、一貫して、非製造業よりも高い。ただし、1975年からの円高以降、収益性は低下傾向にあり、また、非製造業と近い水準になることもあった。特に、2007年度の第四半期に製造業の収益は、マイナスに転落し、非製造業を下回った。そして、近年は、製造業と非製造業の営業利益率はほとんど変わらない水準となっていることが分かる。

日本の製造業と非製造業の営業利益率
日本の製造業と非製造業の営業利益率

(資料)法人企業統計から筆者作成
(注)縦軸は四半期ごとの営業利益率、横軸は年を表している。全企業規模を対象とした売上高及び営業利益から算出。

日本企業は、素晴らしい技術力で世界を席巻した時期もあったが、先進諸国の製造企業のみならず、新興国の新規参入企業との激しい競争にさらされている。特に、新興国企業の製品の技術力は、近年、急速に向上しており、かつ、高いコスト競争力も有している。従来のように、高性能な製品を作るだけではなく、製品・サービスの差別化の徹底やビジネスモデルの革新による顧客満足度の向上なども必要になる。あるいは、新興国の企業の力を活用して、徹底的にコスト低減を追及し、差別化を図る戦略もある。このようなイノベーションを実現するためには、戦略的マネジメントが不可欠であることは言うまでもない。

ほとんどの日本企業で新規事業が必要であることは言うまでも無いが、それを実現する戦略的マネジメントを実践するために必要な知識を習得している人材は決して多くない。例えば、大手企業であれば、技術開発担当者や営業担当者は数多くいるが、新規事業、新製品、新サービスを企画する担当者はどれだけいるだろうか。おそらく、そのような人員はほとんど配置されておらず、個々の技術者や営業担当者がそれぞれにおいて新製品や新サービスを考えているのが実態と考えられる。これは企業の活動の実態を考えれば仕方のないことかもしれないが、日常業務に追われている技術開発担当者や営業担当者が新規事業を創出することが求められていることになる。とすれば、個々の担当者が幅広い視野を持ち、新しいアイデアを見出し、それを組織的にイノベーションに結びつけなければ、イノベーションは創出できない。そのため、可能であれば、個々の担当者、あるいは少なくとも新規事業を担当するチームの何人かは新規事業に必要な戦略論の知識を習得しておくことが望ましい。

イノベーションと言えば、大変難しいイメージがあるが、その戦略論は決して難しいものではない。企業の実務担当者やイノベーションに興味のある学部生・大学院生が容易に理解できる内容である。この連載では、そもそもイノベーションとは何か、また、何故、戦略が必要なのか、そして、その戦略を立案するための実践的な知識を提示したい。


今後の参考にさせていただきます。本稿がよかったと思われる方は「いいね」を押していただければ誠に幸いです。

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次回予告

次回の掲載は2月1日[金]を予定しております。最新情報は『Twitter 玄場研究室』または『facebookページ 玄場研究室』でも配信しております。よろしければフォローしてください。

【追記】第2回分を掲載しました。

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著者 玄場公規
出版社 創業経営コンサルティング
出版年月日  2018/12/30
フォーマット Kindle版
ファイルサイズ 2607KB
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